財産管理の手法

財産管理における司法書士法の規定

財産の管理を任せたい

 司法書士法第29条1項1号に『法務省令に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務』とあります。この法務省令が、司法書士法施行規則第31条です。財産管理に関する規定は、1項1号にあります。

 『当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務』
 この規定は、弁護士法人の業務及び会計帳簿に関する規則に規定されている文言と全く同じです。つまり、財産管理契約を締結し、上記に掲げるような業務を業として行えるのは、弁護士と司法書士だけということになります。
 これは、平成14年の司法書士法改正の際認められた規定で、背景には司法書士の成年後見業務における実績が考慮された結果でしょう。成年後見業務は、身上監護と財産管理双方を行う業務であり、すなわち財産管理も業務に含まれているからです。

当事務所の財産管理の方法

1. 主として普通預金通帳による管理を行います。
 普通預金通帳の収支について、エクセルで一覧表を作成し、摘要欄に明細を記載することにより、内容の把握・透明性を図ります。いわば、通帳を家計簿代わりに使用するのです。
 施設に入所したきりの人、食品及び日用品の買物が不可能な人を除き、一定日毎に、依頼者の口座に生活費を振り込む方法により生活費を渡し、日常生活用品の購入は依頼者自らこれを行い、これ以外の費用の支払いを代行します。
 現金出納帳を作成することも一つの方法ですが、依頼者毎の現金管理の煩雑さを回避し、具体的な収支内容を直接的に表示する方法として、当事務所はこの方法を採用しております。仮に現金払いをした場合でもその都度通帳から引き落とし、摘要欄に明細を入力しておきます。
 但し、この方法は依頼者の銀行口座が、事務所から遠方にある場合は採用が困難です。その為、依頼者には、事務所近隣の銀行口座を、生活費支払用に開設していただけるよう要請します。

 成年後見の場合、裁判所に提出する領収書は、原則10万円以上の支出についてのみですが、領収書の全てを3年間保管し、一覧表にも全ての明細を記載します。
 定期的な支払は、口座振替や振込による方法を採用します。

2. 資産運用について
 依頼人の明確な指示がない限り、安全運用を選択します。具体的には、定期預金・国債・公社債を構成資産とする安定的な運用重視のインデックス型投信等で運用します。投信は、元本割れもある投資方法ですから、依頼者の平均余命及び総資産の額を考慮し、最低でも寿命を全うするまでの生活費に不足することがないよう細心の注意を払い、あくまで余剰金での運用に留めます。

3. 死後事務について
 依頼者の親族との関係にもよりますが、仮に親族と疎遠な関係にある場合、葬儀・埋葬の手配や墓地の購入・墓の建立、年忌法要等については、親族の積極的な関与が期待されません。
その場合、葬儀・埋葬・お墓の建立までの事務であれば、死後事務委任を受ける事により実現が可能になります。年忌法要は、現状、信託銀行による永代供養信託の紹介や、この契約締結を補助することが可能です。
なお、祭祀を承継する親族が現れた場合、この方に事務引継ぎを行います。