成年後見人とは・・・
成年後見人とは、判断能力の減退により、日常の財産管理や契約等の法律行為を単独で行う事ができない人の財産管理や身上監護(老人保健施設や病院等での治療・入院の手続き)を行うため、裁判所の審判(決定)により、選任される人を言います。
法定後見と任意後見
法定後見は、本人、配偶者、4親等内の親族等が裁判所へ申立てることにより、後見人が選任されます。従来は、親族が選任されることが多かったのですが、現在、財産管理能力や親族間の対立等の事情を考慮し、後見人の報酬支払能力がある場合、司法書士・弁護士等の専門家後見人を選任する事例が増えています。
一方、任意後見は、本人と任意後見人候補者が、本人の意思能力が減退する前に、公正証書により代理権の範囲や後見人の報酬を定める契約を行います。
本人の意思能力が減退した後、医師の診断書を裁判所に提出し、任意後見監督人選任の審判を申立てます。申立は、法定後見の申立人の他、任意後見候補者(受任者)も申立てることができます。
任意後見は、任意後見監督人が選任された後に後見が開始します。(したがって、任意後見契約を締結しただけでは、後見は開始せず、単に法務局の後見登記ファイルに任意後見候補者として記録されるに過ぎません)
後見の事務
財産管理
日用品の買物以外の契約を、本人を代理して行い、1年ごとに財産の収支記録及びその時点での財産目録を作成し、かつ、今後、予想される収支計画を裁判所に報告する必要があります。収支記録には、10万円以上の支出には、領収書等支払を証明する書面を添付します。日常的な支払のための資金は、後見人の身近な銀行口座により管理しますが、余剰資金は、定期預金や国債等元本割れの無い安全な資産で運用を行います。
また、3000万円を超える金融資産を有する場合、後見制度支援信託といって、信託銀行に資産を信託し、日常生活費を定期的に生活費管理口座に振り込む方法を要求される場合もあります。なお、任意後見の場合は、契約による代理権目録記載の範囲で代理します。
身上監護
後見人が、施設に入所することになったり、手術を伴う重大な治療を受けること等になった場合、被後見人に代わり施設や医師からの説明を受け、入所契約や入院手続きを代理して行います。なお、現行成年後見人に医療行為の同意権は認められていません。しかしながら、医療侵襲を伴う手術等の同意を医師から求められた場合、後見人の同意権が無いとして放置することは現実的ではありません。韓国も昨年成年後見制度が発足しましたが、成年後見人に医療行為の同意を認めています。
今後は、医療行為の同意を視野に入れた法改正が検討されるのではないでしょうか。
居住用資産の売却には裁判所の許可が必要
例えば、介護施設に入院し帰居の見込みが無く、医療費の支払いのため居住していた自宅を売却する必要がある場合、予め裁判所の許可を得る必要があります。被後見人にとって、居住環境の変更は重大な影響を及ぼすため、その必要性を裁判所が審査することになります。
は、後見は開始せず、単に法務局の後見登記ファイルに任意後見候補者として記録されるに過ぎません)
任意後見の優先
任意後見は、本人の自己決定を尊重する観点から、原則として法定後見に優先します。ただし、「本人の利益のために特に必要があると認めるとき」例えば、契約された代理権の範囲が狭すぎて生活に支障が出るような場合には、法定後見開始の審判をすることができます。
このように、任意後見は、本人が信頼して選んだ者が後見事務を行うのですから、本人の見知らぬ者による後見事務に不安がある場合は、有効な方法と言えます。ただし、任意後見人には、同意権・取消権が無いため、本人が勝手に行った契約等を取り消すことができないことに注意すべきです。
この場合、契約内容によっては公序良俗に反する等民法上や消費者契約法による取消を検討することになります。